米国医学アカデミー(National Academy of Medicine: NAM)は、2020年10月19日の年次総会において新会員(正会員90名、国際会員10 名)を発表しました。その中で国際会員として日本から日本摂食嚥下リハビリテーション学会(JSDR)理事の才藤栄一先生(藤田医科大学学長)が選出されました。

NAMは、1970年に設立された独立非営利の学術機関であり、米国科学アカデミー、米国工学アカデミーとともに、独立した客観的な分析に基づき、社会問題解決と政策決定に必要な情報を政府に提供しています。ニューヨークタイムスは、NAMを「the United States' most esteemed and authoritative adviser on issues of health and medicine, and its reports can transform medical thinking around the world」と評しています。

NAM会員資格は、米国の医学、医療、公衆衛生分野における最高の栄誉といわれ、これまでにノーベル賞受賞者など著名な研究者を含む正会員 2,200名、国際会員175名が選出されています。本邦からは、黒川清氏(1996)、岸本忠三氏(1997)、山中伸弥氏(2015)など12名が選ばれており、リハビリテーション医学領域からは初めてのことです。

才藤理事は、日本、アジアのリハビリテーション医学、そして世界の嚥下研究のリーダーという社会的実績、ロボット/支援機器開発や3D-CTを応用した嚥下の基本的メカニズム解明など、そのgroundbreakingな研究業績を評価され選出されました。才藤理事は、本学会設立(1994年)の発起人の一人であり、以来、本邦の摂食嚥下リハビリテーションの臨床・研究の発展を牽引してきました。特にこの十数年は、本学会で築き上げてきたtransdisciplinaryの理念を主軸にアジア諸国への教育活動そして欧州や米国などとの共同研究や相互交流を積極的にすすめ、世界をリードする研究者として活躍されています。2017年には、米国のDRS、欧州のESSDとともにJSDRの代表としてWorld Dysphagia Summit(WDS)創設を推進しました。今回の選出で摂食嚥下分野での実績が認められたことは、本学会として大変喜ばしいことです。

NAM国際委員の選出を受けて才藤氏は「大変名誉なポジションであり、とても嬉しく感じております。選出理由の1つに私たちの嚥下研究とその科学社会における推進が挙げられたことを、とてもありがたく思います。今回頂いた評価を糧に摂食嚥下リハビリテーションをはじめとする活動の医学であるリハビリテーション医学をより一層強靭なものにするよう努力する所存です。」とコメントしています。

才藤 栄一 理事 略歴

日本摂食嚥下リハビリテーション学会:才藤 栄一

才藤 栄一(さいとう えいいち)
1955年、東京生まれ。医学博士、専門はリハビリテーション医学。
1980年 慶應義塾大学医学部卒業
1998-2019年 藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座主任教授
2019年から同大学学長
社会活動:国立長寿医療研究センター理事、米国 Johns Hopkins大学客員教授、等
受賞:国際リハビリテーション医学会 Sidney Licht Lectureship賞(2015)、第8回日本ロボット大賞厚生労働大臣賞(2018)、等