日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 理事長:鎌倉やよい
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 理事長
鎌倉 やよい

このたび、2021年8月の定例社員総会承認後の新理事会で、一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会理事長を拝命いたしました。初代の金子理事長、第2代才藤理事長、第3代椿原理事長、第4代植田理事長からのバトンを受けました。看護職が理事長に就任することは初めてのことですが、本学会の発展に尽力する所存です。

本学会の目的は定款第4条に「摂食嚥下リハビリテーション学の研究、教育、臨床、普及、促進を図り、摂食嚥下の機能低下の予防、摂食嚥下障害者の機能回復、さらには一般市民の健康維持、向上に貢献し、もって、国民の健康と福祉の増進に寄与する」と定められています。この目的を達成するための事業が、定款第5条に(1)学術大会の開催、(2)研修会の開催、(3)機関誌の発行、(4)認定事業、(5)教育・育成事業、(6)調査・他領域との共同研究、(7)関連団体との連携交流、(8)情報の発信・啓発事業が記されています。

これまで、本学会は、目的に沿って具体的な事業を掲げ、確実に順調に実現させて、成果をあげてきました。さらに、疾患に伴う摂食嚥下障害のスクリーニング検査、診断法、治療法、訓練法、評価ツールの開発など、摂食嚥下リハビリテーションの体系化に貢献してきました。しかし、エビデンスレベルはまだまだ十分とは言えないため、体系化に向けての研究の推進は重要課題です。さらに、COVID-19の感染拡大は、摂食嚥下の臨床に大きく影響し、診療時の感染予防対策が重要となります。社会に向けた情報発信を継続したいと存じます。

日本は世界に先駆けて超高齢社会が進行しています。どのように日本が乗り越えていくのか、世界が注目していると言えます。現在、地域包括ケアシステムの構築が推奨され、介護予防の観点から、摂食嚥下機能、栄養状態、運動機能を維持することが求められています。摂食嚥下機能を維持するために、病院、施設、地域医療と視野を広げて、トランスディシプリナリ・チームアプローチを推進すると共に、それぞれの専門職が十分に活動できるような役割拡大に尽力したいと考えます。

さらに、高齢化問題はアジア諸国で加速することが予測されています。倍加年数(高齢化率が7%から14%に達するまでの所要年数)をみると、フランスは115年、スウェーデンは85年、アメリカは72年に比較し、日本24年、中国24年、これを上回ってシンガポール20年、韓国18年と予測されています。急速な高齢化問題が予測されるアジア諸国への摂食嚥下リハビリテーションの普及・啓発活動の拡大は重要であると考えます。本会はこれまで国際貢献に尽力して参りましたが、さらに、日本のモデルを示しながら、アジアにおける摂食嚥下リハビリテーションを推進したいと考えます。

最後になりましたが、会員の皆様が摂食嚥下リハビリテーションにおいて、力を発揮して活躍できるように尽力したいと思います。皆様のご協力とご支援をお願い申し上げます。